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NHK クローズアップ現代 『電子書籍 新時代の衝撃』を観て・・・

Posted in eBook by Agile Cat on October 19, 2010

ちょっとハズレでしたが、次回に期待したいと・・・

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昨晩(9/18)の NHK クローズアップ現代 『電子書籍 新時代の衝撃』ですが、正直なところ、期待はずれだったと言わざるを得ません。 そのコンテンツは、Sharp の GALPAGOS のデビューから始まり、[ 日本印刷+DoCoMo ] ライアンスと、[ ソニー+凸版印刷+KDDI+朝日新聞 ] ライアンスの動向、そして、アメリカの Kindle ユーザーへのインタビューなどといった順で構成されていました。 そして、アウトラインを一通りなぞった後に、コメンテータである津野海太郎氏がまとめるという内容です。

同氏の言う、コンテンツ/流通(配信)/デバイスの三拍子が揃わないと成功しないという論点は正しいのです。 ただし、デバイスは電気が必要であり、かつ、壊れるものである。 また、インターネットは繋がらないときがある。紙が駆逐されることはない。 ・・・ と言った発言(本音?)は、あくまでも業界を代表する声としか聞こえませんでした。

たしかに、電気を使う電子書籍ですが、たとえば 物理的な流通が省かれ、森林資源が保護されることで、CO2 排出が削減されるはずです。 30分という時間枠で、あまり多くのことに取り組めないでしょうが、電子というものに対するネガティブな側面が語られるなら、紙に対するネガティブも語られるべきだったと思います。

ここで、ちょっと別の視点から・・・

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出版業界に関連する話として、やはりクローズアップ現代の 『 ランキング依存が止まらない 』という番組を Web で見つけました。 2年ほど前の、ちょうど草思社が破綻したころに放送された番組とのことですが、出版業界の問題を鋭く抉っていて、こちらの方が面白い内容になっていました。

出版点数の伸びと、中小書店数の減少は、ランキング重視の販売方法に原因があり、その背景に出版業界の特殊な慣行があるという論点です。 こちらは、昨晩も出演していた 中俣暁生氏がコメンテータであり、この好ましいとは思えない慣行を分析するという、かなり突っ込んだ内容となっていました。

① 本が出来上がると、予測値に基づいて出版社に対価が支払われる。

② 書店での売れ残りが生じると、場合によっては対価の返金も生じる。

③ 返金できない場合には、新たな書籍の出版により穴埋めする。

④ 出版点数の増加に対応するため、取次は効率のよい販売方法を求める。

⑤ そこでランキングが登場し、大型書店への集約が促進される。

⑥ 結果として、少数の売れ筋と、大量の売れない本が生じる。

⑦ 大量の売れ残り書籍が、出版社を追い詰めていく。

つまり、こうした悪循環に苦しんでいる出版業界に、電子書籍という新しいカードが舞い込んできたわけです。さらに、Amazon を例にして、さまざまな視点から、とりわけコンテンツの配信形態について、この業界としての研究も進んできたのでしょう。

・・・ ここで、話は戻ります。

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前述の印刷業/出版業/キャリアにより構成されるアライアンスを見ると、まずは取次と書店に費やされていたコストをゼロにしようという合意が、形成されていると思って間違いないようです。 そして、Kindle をモデルにして登場人物を当てはめていくと、大日本印刷+DoCoMo や、凸版印刷+KDDI といったアライアンスが、Amazon と同じ役割を担うことになります。

昨夜の番組でも言っていましたが、Amazon の場合は書籍の価格が、平均して 1/3 に下がっているようです。 また、作家への対価も、これまでに比べると大幅にアップしているようです。 それと同等のレベルまでいければ、日本における電子出版も成功したことになるのでしょう。 しかし、これまでの複雑な流通形態を整理しても、そこで圧縮されたコストが、顧客や作家に還元されないのでは、せっかくの電子書籍も意味が半減してしまいます。

なんと言うか、クラウド・コンピューティング全体から見ると、電子書籍といっても 1つの SaaS に過ぎないわけですが、社会のあり方や個人のライフスタイルを、新しい概念で置き換えていく際の、モデル・ケースになることに間違いはありません。 そして、その後に続くのが、エネルギーという重要な課題です。 世界の中の日本を考えるとき、その特殊性をどのように維持して、どのように放棄するのかという、大きな岐路に対処する必要があるのですが、そこでのお手本になるような、うまい落しどころを、出版業界には見せてもらいたいものです。そしてクローズアップ現代には、2回目、3回目の、トレースを実施して欲しいと願っています。

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